個人も法人も、税に関する申告や届出などでe-Taxを利用するときには、利用者識別番号が必要になります。確定申告などでe-Taxを利用しようとして、「利用者識別番号とは何だろう」「利用者識別番号を取得するにはどうすればいいのだろう」と考える方は多いかもしれません。また、利用者識別番号と似た言葉として納税用確認番号があり、間違えないように正しく理解する必要があります。
ここでは、e-Taxの利用にあたって必要な利用者識別番号の意味や取得方法、利用者識別番号を忘れたときの対処方法のほか、利用者識別番号と納税用確認番号の違いについても解説します。
目次
利用者識別番号は、税務申告などの手続きにおける不正やなりすましを防ぐために導入された16桁の番号で、e-Taxを利用する際に必要になります。
e-Taxとは、所得税、法人税、消費税の申告や税に関連する申請、届出などのさまざまな国税の手続きを、オンラインで行えるシステムです。e-Taxを利用するためには、個人、法人ともに、あらかじめ利用者識別番号を取得しなければなりません。利用者識別番号は1人(または1法人)につき1つしか取得できず、一度取得した番号は転居をしても引き続き使えます。e-Taxで電子申告を行う場合には、利用者識別番号と併せてマイナンバーが必要になり、これにより本人確認が行われます。
なお、利用者識別番号はe-Taxで使用する番号であるため、紙ベースで申告や届出を行う場合は、取得は不要です。また、e-Taxの利用経験があり、過去に取得した利用者識別番号を確認したい場合は、確定申告等作成コーナーを利用した際の「申告書等送信票(兼送付書)」や、税務署から届く「確定申告のお知らせ」などに利用者識別番号が記載されています。
利用者識別番号を取得するタイミングは、初めてe-Taxを利用するときです。利用者識別番号の取得手続きはe-Taxのシステム上で行えますが、個人と法人で取得方法が異なります。それぞれの取得方法は、下記のとおりです。
個人が利用者識別番号を取得する場合は、マイナンバーカードを使う方法と、使わない方法があります。それぞれ、下記のような流れで取得します。
・ マイナンバーカードを使う場合
マイナンバーカードを使う場合は、ICカードリーダライタかマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンが必要です。パソコンで手続きを行う場合、4つのステップで利用者識別番号を取得します。
<マイナンバーカードを使う場合の利用者識別番号取得の流れ>
1. e-Taxサイトの上部にある「ログイン」ボタンをクリックして「個人の方」を選び、e-Taxソフト(WEB版)のログイン画面にアクセスする
■ログイン画面
2. ログイン画面から「スマートフォンで読み取り」または「ICカードリーダーで読み取り」のいずれかを選び、画面の指示に従ってマイナンバーカードを読み取る(読み取り方法に応じて、マイナンバーカード受け取り時に設定した「利用者証明用電子証明書パスワード」か「券面入力補助用パスワード」の入力が必要)
■読み取り方法の選択画面
3. 表示された内容を確認し、必要事項を入力する
■必要事項の入力画面
4. 「利用者識別番号の通知を希望する」にチェックを入れると、画面に利用者識別番号が表示される
■「利用者識別番号の通知を希望する」のチェックマーク入力画面
・ マイナンバーカードを使わない場合
マイナンバーカードを使わない、または持っていない場合は、e-TaxのWebサイト内にある「作成・送信する開始(変更等)届出書の選択」から開始届出書を作成・送信すると、利用者識別番号を取得できます。「開始届出書(個人の方用)新規」を選び、「マイナンバーカードをお持ちでない方はこちら」に進みましょう。画面の指示に従い必要事項を入力していくと、利用者識別番号が設定されます。
なお、この方法で取得した利用者識別番号を使用して確定申告書等作成コーナーで確定申告などを行う場合には、原則としてマイナンバーカードが必要になります。マイナンバーカードを使用せずにe-Taxで確定申告をしたい場合「ID・パスワード方式」という方法も利用できますが、ID・パスワード方式を利用するには、税務署での対面による本人確認など所定の手続きが必要です。
法人がe-Tax上で利用者識別番号を取得する場合、e-TaxのWebサイト内にある「作成・送信する開始(変更等)届出書の選択」から手続きを行います。「開始届出書(法人用)新規」を選び、法人情報や代表者情報などの必要事項を入力して開始届出書を作成・送信すると、利用者識別番号を取得できます。また、メッセージボックスに「利用者識別番号等の通知」が格納されるため、確認しましょう。
利用者識別番号は、e-Taxを利用せずに取得する方法もあります。個人、法人のそれぞれで、下記のような方法で利用者識別番号を取得することが可能です。
個人の場合、e-Tax以外でも下記の4つの方法で利用者識別番号を取得できます。利用しやすい方法で取得しましょう。
・ マイナポータルの「外部サイトとの連携」機能から取得する
政府が運営する行政手続きのオンラインサービスであるマイナポータルからでも、利用者識別番号を取得可能です。マイナポータルの「外部サイトとの連携」機能からe-Taxを利用しようとすると、利用者識別番号がない場合は「利用者情報の登録」画面に遷移します。画面の指示に従い入力を進めると、利用者識別番号を取得できます。なお、手続きにあたってはマイナンバーカードが必要です。
・ 確定申告書等作成コーナーまたは税務署でID・パスワード方式の届出を作成・送信する
Web上の「確定申告書等作成コーナー」または税務署でID・パスワード方式の届出をして、利用者識別番号を取得することもできます。ID・パスワード方式とは、税務署から発行されたIDとパスワードを使って確定申告書などのデータを送信する方法です。ID・パスワード方式を利用すると、マイナンバーカードがなくてもe-Taxで確定申告ができます。
確定申告書等作成コーナーから手続きをする場合は、マイナンバーカードとICカードリーダライタが必要です。税務署で手続きをする場合は、マイナンバーカードは必要ありませんが、職員の対面による本人確認が行われるため、運転免許証などの本人確認書類の提示が求められます。
なお、ID・パスワード方式は、マイナンバーカードやICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応であり、確定申告書等作成コーナー以外では利用できない点に注意が必要です。また、法人にはID・パスワード方式はありません。
・ 書面で利用者識別番号を取得する
利用者識別番号は、書面で取得手続きを行うことも可能です。「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」に必要事項を記載し、納税地を所轄する税務署への送付または持ち込みによって提出すると、郵送で利用者識別番号が通知されます。また、e-Taxのメッセージボックスに、「利用者識別番号等の通知」も併せて格納されます。開始届出書の用紙は、国税庁のWebサイト「H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出」からダウンロード可能です。
・ 税理士に依頼する
税理士に依頼して開始届出書を代理送信してもらい、利用者識別番号を取得することもできます。手続きの詳細については、依頼する税理士に確認してください。
法人の場合、e-Tax以外の方法で利用者識別番号を取得するには、下記の3つの方法があります。法人の場合、マイナポータルは利用できませんが、「法人設立ワンストップサービス」と呼ばれるオンラインサービスの利用が可能です。
・ 「法人設立ワンストップサービス」から利用者識別番号を取得
法人の場合は、デジタル庁の「法人設立ワンストップサービス」から開始届出書を作成・送信して、利用者識別番号を取得することができます。法人設立ワンストップサービスとは、法人設立に関連するさまざまな手続きを、オンラインで行えるサービスです。なお、法人設立ワンストップサービスから利用者識別番号を取得するには、法人代表者のマイナンバーカードが必要です。
・ 書面で利用者識別番号を取得する
法人も個人と同様に、紙の「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」を税務署に提出することで、利用者識別番号を取得できます。書式内の法人向けの記入欄に、必要事項を記載してください。
・ 税理士に依頼する
個人と同様、法人の場合も税理士への依頼が可能です。税理士に開始届出書を代理送信してもらうことで、利用識別番号が取得できます。手続きの詳細については、税理士に確認しましょう。
利用者識別番号は同じ番号を使い続けるため、適切に管理しなければなりません。もし利用者識別番号を忘れてしまった場合は、再発行の手続きが必要になります。
ただし、個人の方で、マイナンバーカードを使って利用者識別番号を取得した場合は、e-Tax上で利用者識別番号の確認が可能です。利用者識別番号の確認、再発行の方法は、下記のとおりです。
マイナンバーカードを使って利用者識別番号を取得した個人は、「マイナンバーカード方式」の登録が完了しているため、マイナンバーを利用してe-Taxにログインして、利用者識別番号を確認できます。
マイナンバーカード方式とは、e-Taxへのログインのためにマイナンバーカードを用いるログイン方式です。マイナンバーカード方式を利用していると、利用者識別番号を入力しなくても、マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書パスワードがあれば、e-Taxへのログインは可能です。e-Taxにログインして「マイページ」に進むと、「基本情報」のページで利用者識別番号を確認できます。
利用者識別番号を忘れた場合、マイナンバーカード方式を利用している個人でなければ、e-Taxへのログインができません。その場合は、利用者識別番号の再発行手続きが必要になります。利用者識別番号を再発行するには、e-Taxの「作成・送信する開始(変更等)届出書の選択」から手続きを行ってください。
なお、利用者識別番号を再発行すると過去の番号は別人の番号として認識される点に注意が必要です。利用者識別番号によって、過去の申告情報などもオンラインで確認できますが、取得できる番号は1人につき1つの番号のみとなるため、番号の変更により、過去の申告情報などには過去の番号ではアクセスできなくなります。
■利用者識別番号変更時に過去の申告情報などへアクセスする際のイメージ
利用者識別番号と間違えられやすい言葉として、納税用確認番号が挙げられます。納税用確認番号は、ATMやインターネットバンキングを利用した電子納税の際に使用する6桁の番号です。ATMやインターネットバンキングの画面上で、「確認番号」の欄に納税用確認番号を入力します。
一方、利用者識別番号は、e-Taxを利用する際に必要になる16桁の番号です。どちらも、電子的な税務手続きに関わる番号ですが、必要となる場面が異なるので注意しましょう。
e-Taxの利用にあたり開始届出書を提出する際には、納税用確認番号として任意の6桁の番号を登録します。自分で決めた納税用確認番号を忘れないように、利用者識別番号とともに管理してください。もし、納税用確認番号を忘れてしまった場合は、e-Tax上の「マイページ」内の「還付・納税関係」メニューから、新しい納税用確認番号を設定できます。
e-Taxは、オンラインで国税に関するさまざまな手続きができるシステムです。e-Taxを利用すると、わざわざ税務署に行かなくても確定申告などの手続きが行えるため便利ですが、e-Taxの利用には利用者識別番号が必要になります。e-Taxを活用したい場合は、確定申告の時期に慌てないように、あらかじめ利用者識別番号を取得しておきましょう。
個人も法人も、確定申告にあたっては作成しなければいけない書類も多く、手続きが煩雑になりがちです。e-Taxを利用すればオンラインで手続きができるとはいえ、申告に伴う事務負担は少なくありません。申告の手間を軽減するには、ツールの活用がおすすめです。
例えば「電子申告の達人」を活用すれば、確定申告の効率化に役立ちます。「電子申告の達人」は、電子申告のデータ作成から送信、受信確認までを効率良く行える税務申告ソフトです。「法人税の達人」などの申告書作成ソフトで作成した申告・申請などのデータや、外部システムで作成したデータを電子申告データに変換し、署名・送信から受信確認までの一連の作業を簡単操作で実現します。便利なツールを活用して、税務申告にかかる手間と時間を軽減してみてはいかがでしょうか。
監修者
石割由紀人(石割公認会計士事務所)
公認会計士・税理士、資本政策コンサルタント。PwC監査法人・税理士法人にて監査、株式上場支援、税務業務に従事し、外資系通信スタートアップのCFOや、大手ベンチャーキャピタル、上場会社役員などを経て、スタートアップ支援に特化した「Gemstone税理士法人」を設立し、運営している。