国に納める国税や、地方公共団体に納める地方税は、インターネットを使用した電子申告が可能です。電子申告を利用すれば、わざわざ税務署や役所などに足を運ぶ必要がありません。また、資本金が1億円を超える法人に対しては、国税や地方税の電子申告が義務化されています。
ここでは、税金の電子申告の概要やメリット、国税・地方税それぞれの電子申告の方法などについて解説します。
電子申告とは、税金の申告や納付、届出、申請などの手続きを、インターネットを通じて行うことができるシステムのことです。
税金には、国に納める「国税」と、都道府県や市町村に納める「地方税」があります。国税には所得税や法人税、地方法人税、消費税などが、地方税には個人住民税や法人住民税、個人事業税、法人事業税、固定資産税、地方消費税などがあります。
このうち国税は、納税者がみずから納税額を申告して納付する「申告納税制度」が採用されています。また、地方税のうち法人住民税や法人事業税なども、同様に申告納税制度となっています。これらの税金は、納税者自身が所得額などから納めるべき税額を計算して申告し、それによって確定された納税額を納めます。この一連の手続きを、確定申告といいます。
電子申告は、個人や法人の確定申告をはじめ、税に関する申請・届出などの手続きをオンライン上で行えるシステムです。国税は「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」、地方税は「eLTAX(地方税ポータルシステム)」を利用した電子申告が可能です。
平成30年度税制改正により、資本金1億円超の法人などを対象に、2020年4月1日以降に開始する事業年度から電子申告が義務化されました。対象となる法人は、法人税および地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税および地方消費税について、必ず電子申告を行わなければなりません。
電子申告の義務化は、現在はまだ大企業のみが対象ですが、将来的には中小企業にも適用される可能性があります。いざというときにスムーズに対応できるよう、義務化の対象ではない法人や個人事業主も、早めに電子申告に取り組んでおくほういいでしょう。
電子申告にすると、今まで直接出向いて行っていた作業がオンラインで完了することになり、提出時も提出先の受付時間に合わせる必要がありません。事業者には主に次のようなメリットがあります。
電子申告では、インターネット環境さえあれば、オフィスや自宅のパソコンから簡単に手続きができます。わざわざ税務署や都道府県税事務所に足を運ぶ必要がなく、手間と時間が大幅に削減されることがメリットです。
特に所得税の確定申告の時期は、税務署が非常に混雑します。申告書を郵送で提出する場合も、書類をそろえて封をして、郵便局やポストまで行く手間が生じるでしょう。好きな場所で手続きができる電子申告なら、移動時間もかからず、税務署の窓口で列に並ぶ必要もありません。
インターネットを通じて手続きをする電子申告は、提出先の開庁時間に左右されることなく、都合の良いタイミングで申告や届出を行えることがメリットです。
例えば、税務署の開庁時間は、祝日などを除く月曜から金曜の8時30分から17時です。この時間内に窓口に出向いて手続きをしようと思うと、業務を一時中断しなければなりません。一方、e-TaxやeLTAXは土日や深夜でも利用でき、申告手続きが集中する時期はメンテナンス時間を除き全日24時間対応しています。
電子申告を利用すると、窓口提出や郵送提出の際に必要な添付書類の一部を省略できることがメリットです。例えば、所得税の生命保険料控除や医療費控除を受ける場合、電子申告では、必要事項を入力して送信すれば、証明書の提出を一部省略できます。細かい作業が減り、時間的なゆとりにつながるでしょう。
ただし、提出を省略した書類でも、一定期間保存の必要があるため注意が必要です。
電子申告をすると、紙の書類による申告に比べて還付が早いというメリットがあります。還付とは、納め過ぎた税金が払い戻される制度のことです。例えば、源泉徴収などで納めた所得税が本来納めるべき税額より多かった場合や、売上にかかった消費税より仕入れにかかった消費税が多かった場合は、還付申告を行えば税金の払戻しが受けられます。また、青色申告をしている中小企業は、赤字が出たときに前年度の黒字と相殺して、法人税の払戻し(欠損金の繰戻しによる還付)を受けることができます。
一般的に、紙での申告は還付金を受け取るまでに6週間程度かかりますが、電子申告なら3週間程度に短縮されます。
国税の電子申告には、「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を利用しますが、手続きまでには事前準備などが必要です。ここからは、国税の電子申告に必要な準備や、申請方法について解説していきます。
国税の電子申告を利用するには、提出に必要なデータだけでなく、次のような事前準備があります。スムーズに電子申告を始められるよう、あらかじめ確認しておきましょう。
電子申告で申告書などを提出するには、国税庁のe-Taxソフトを使って申告・申請データを作成する方法と、市販の電子申告ソフトを利用する方法があります。市販の電子申告ソフトの多くは、会計ソフトなどで作成した帳簿データと連携して申告書を作成し、電子署名やデータ送信、受信確認までの一連の作業をワンストップで行えます。
地方税の電子申告には、「eLTAX(地方税ポータルシステム)」を利用します。地方税の電子申告を行う場合にも、提出に必要なデータだけでなく、事前準備などがあります。
地方税の電子申告には、次のような事前準備が必要です。スムーズに電子申告を始められるよう、あらかじめ確認しておきましょう。
地方税の電子申告を行うには、eLTAXサイトからダウンロードできるソフト「PCdesk」か、eLTAXに対応した市販の電子申告ソフトを利用します。市販の電子申告ソフトは、国税と地方税の両方に対応できるものを選ぶと便利です。
電子納税とは、インターネットを通じて税金を納付する手続きのことです。電子納税を利用すると、税金を納付するために税務署や金融機関などに出向く必要がありません。国税や地方税を電子申告した後は、電子納税を利用すると手続きが非常にスムーズです。ただし、電子納税では領収書が発行されないので注意が必要です。
国税、地方税の電子納税で利用できる納付方法を下記に紹介します。
<国税の場合>
<地方税の場合>
国税は、e-Taxで申告等データを送信した場合と送信していない場合で、電子納税の方法が異なります。
申告等データを送信した場合、メッセージボックスに届く「納付区分番号通知」から、納付情報の登録をせずに電子納税の手続きを進めることができます。
一方、申告等データを送信していない場合は、e-Taxで納付情報を登録すれば、同じように「納付区分番号通知」から電子納税の手続きができます。また、税務署から処分通知等が電子通知された場合も、メッセージボックスからの電子納税手続きが可能です。そのほか、ペイジーに対応したATMやインターネットバンキング画面で納付目的コードを作成して、電子納税を行うこともできます。
地方税は、共通納税のシステムを利用して、対象となるすべての地方公共団体へ一括して電子納税することが可能です。
eLTAXから電子申告をした場合は、提出済みの申告データを選択すれば、その申告内容に応じた税金を納付することができます。
申告データを連動させない場合は、納付先や税目、納付額などを直接入力して電子納税ができます。2023年4月1日からは、納付書に記載された「地方税統一QRコード(eL-QR)」や「eL番号(納付書番号)」を利用して、地方税お支払サイトからパソコンやスマートフォンで地方税を納付できるようになりました。
電子申告を行うと、紙の書類を提出することに比べて手間や時間がかからず便利です。その一方で、電子申告を始めるにはさまざまな準備が必要です。申告する税金が複数ある場合は、それぞれについて申告書の作成やデータ送信、納税手続きを行わなければなりません。
電子申告の手間を削減するには、e-Tax、eLTAXと連携した電子申告ソフトの活用がおすすめです。電子申告ソフト「電子申告の達人」は、簡単な操作で申告書作成から電子申告、電子納税までの一連の作業を完結させることができます。電子申告にかかる手間を削減し、業務効率化を進めるために、ぜひ「電子申告の達人」の導入をご検討ください。
監修者
石割由紀人(石割公認会計士事務所)
公認会計士・税理士、資本政策コンサルタント。PwC監査法人・税理士法人にて監査、株式上場支援、税務業務に従事し、外資系通信スタートアップのCFOや、大手ベンチャーキャピタル、上場会社役員などを経て、スタートアップ支援に特化した「Gemstone税理士法人」を設立し、運営している。